お知らせ(6)
日記・雑記(4)
イラスト・ポケ(7)
小説、語り・ポケ(18)
イラスト・よろず(23)
小説、語り・よろず(18)
≪ 2025/04 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 ≫
≪ 2025/04 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 ≫
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
『誰よりも愛しい貴方が』
「ほら!マーくん!!もう起きないと!!」
あ、カツノリさんの声が…。
でも、まだ…眠、い……。
「………はい……後、5分…」
「もう、朝ご飯食べられないよ!」
「!!!!!(ガバァ)そ、それは困ります!」
急に飛び起きた私を見て、カツノリさんはクスクスと笑う。
だって、カツノリさんのお手製の朝ご飯が食べれないなど、太陽の昇らない朝と同じなのです。
「おはよう、マーくん」
朝日の逆光を背負いながら微笑むカツノリさんの姿は、まるで女神のよう…カツノリさんは男の人ですが。
「僕はフライパンとか洗っちゃうから、マーくんは何時ものように配膳、盛り付け当番だよ?」
「はい!わかってます!」
カツノリさんのせっかくの手作りご飯が冷めてしまわぬよう、ベッドら飛び出て、洗面台へと急ぎ、顔を洗い、軽く歯を磨き、寝間着のままキッチンへと駆け込む。
キッチンからは、炊けたお米の良い香り、お肉の焼けた匂いがまだ寝ぼけていた食欲を覚醒させるのです。
食器棚から二枚の色違いのプレート皿を取り出す。
カツノリさんは青色で私は黄色。
このプレート皿は、私がカツノリさんの家に当分お世話になると決まった時に、二人で買いにいったものなのです。
元々カツノリさんは一人暮らしをされていたので、既に一枚、同じ大きさのものを持っていられたのですが、
どうしてもペアの食器にしたいとカツノリさんがおっしゃったので、新たに二枚、買ったのです。
カツノリさんに、「マーくんの方が青なイメージだよ?」と言われましたが、
「カツノリさんは私にとって幸せの青い鳥なのでカツノリさんが青なのです。」
と、言ったら、何故でしょうか、クスクス笑われてしまいましたが、
「じゃあマーくんはヒヨコさんの黄色だね」と言われました。
何がヒヨコなのか判らなかったので伺ってみると、
「ニワトリのお母さんがいないとだめな子なの。ひとりじゃだめな子なの。」
と若干顔を赤らめつつも、冷静そうにサラッと言いながら、私を抱き締めました――
「マーくん!まだ盛り付け終わってなかったの!?またボーッとしてたでしょ。」
カツノリさんの声がして、ハッと我に返りました。
つい、懐かしい思い出にふけってしまい、手がお仕事をおさぼりしていました。
「あっ…すっすみませんカツノリさん…!今やりまっ…あっ」
カツノリさんはスッとプレート皿を私から奪うと、
あっという間に、フライパンのハムエッグをお皿に移し、ボールに作ってあったサラダを添え、両手にそれを持ち、食卓のテーブルにそそくさ行ってしまった。
「あっあっ…カツ、ノリ…さん…」
きまずい気がして、何と言えばいいか判らなくなり、私はただカツノリさんの名前を恐る恐る呼びました。
「マーくんはご飯よそって。僕は何時もよりちょっと少な目ね。」
振り返ってこちらを見たカツノリさんは、困り果てた顔の私を見て、仕方がなさそうに溜息をつきながら笑い、そう言いました。
「はっ、はい!すぐ用意します!なのでカツノリさんは座っててください!!」
カツノリさんの笑顔を見られて安心した私は、急いでご飯をよそい、食卓へと駆け込みました――
「じゃぁ僕はもう行くね?今日は面接、10時からだっけ?」
身支度を一足先に終えたカツノリさん。今日もスーツがきまってます。
「は、はい!10時からです!」
「そかそか、面接、上手くいくといいね。」
「はい!今日は寒いから気をつけてくださいね!」
「うん、ありがとう。…じゃぁ、行ってくるね…おっと、その前に…と。」
カツノリさんの、細くてしなやかな腕が、
私の胸元へとのびる。
その手は、巻かれるのを待って私の首に垂れている細長い布を掴み、
そして、その布をネクタイとしての形へと変身させます。
そう、この布は、カツノリさんがいないと、
ネクタイにはなれないのです。
「よし…と、今日もカッコいいね、僕のマーくん…ふふ。じゃぁ、お先に。面接頑張ってね。」
「はい!いってらっしゃい!カツノリさん!」
私は幸せでした。
こうして、
カツノリさんと同じ屋根の下で、
カツノリさんの美味しいご飯を、
カツノリさんと一緒に食べ、
カツノリさんと色んなことを話して、
カツノリさんと共に夜を過ごして…
とにかく、私は幸せでした。
幸せという言葉では、全然足りないくらい、幸せでした。
誰よりも愛しい愛しいカツノリさん。
あぁ…こんな毎日が、
ずーっと、
永遠に、続けばいいのに…
ですが、それは許されないこと。
カツノリさんにだけ働かせて、
私は、働きも家事さえまともにできなくて、
経済的にも、体力的にも、
カツノリさんの負担になってしまうのです。
だから、早く、新しい仕事を見つけないと…。
カツノリさんが締めてくれたネクタイをギュッと掴み、私は今日の面接場所へと向かいました――――――――
ポーン。
エレベーターが、目的の階に到着したのを告げる音を鳴らし、ドアが開きました。
エレベーターから出て、フロントで渡された鍵の番号の部屋へと向かいます。
カツノリさんは何も言わず、ただ俯いて私についてきます。
そして、鍵の番号と同じ表札の部屋に辿り着きました。
「…つきましたよ、カツノリさん。」
カツノリさんの方へ振り返り、そっとカツノリさんの肩を撫でました。
「…うん。」
カツノリさんは消えてしまいそうな小さい声で呟きました。
カチャッ
鍵を挿し、ドアを開ける。
真っ暗な部屋の奥には、大きな窓があり、
輝くライモンの街を一望できました。
「眺めがいいですね、カツノリさん。」
「…うん。」
カツノリさんはそう言いましたが、
相変わらず俯いたままで、本当にこの景色を見たのかはわかりませんでした。
「…大人に、なったねぇ…マーくんは……」
不意に、カツノリさんは、そう呟きました。
「えっ?」
「だって、今までなんて、自分からホテルにエスコートなんて出来なかったじゃない。」
「あっ、そ、そりゃぁ、もういい歳ですし、それくらいのことは…」
「そっかぁ…立派になったねぇ、マーくん。」
「…カツノリ…さん?」
「もう僕なんかいなくてもマーくんは平気なんだね。」
ガタンッ
私は、気付けば、
カツノリさんを、ベッドに、
押し倒しました。
だって、
カツノリさんが泣いていたから。
誰よりも愛しい貴方が
私の目の前で泣いている。
カツノリさんは目に涙を溜めながら、私を見つめ、何故か笑みを浮かべました。
「あはは、あのマーくんが、僕が手を引っぱってベッドに引き寄せてあげないと駄目だったあのマーくんが、まさか僕を押し倒せるようになっちゃっただなんて」
「…っカツノリさ」
「そうやって、僕のいないところで、僕以外の人も押し倒せちゃえるんだろうね。」
カツノリさんはそう言うや否や私を突き飛ばしました。
「カツノリさん!待って!行かないでください!カツノリさん!」
「僕は何処にも行ってない、マーくんが僕を置いてきぼりにして行っちゃっただけだよ。」
―さよなら、マーくん。―
静まり返った部屋には、
カツノリさんの香水の残り香だけが漂っていました。
誰よりも愛しい貴方が
私を置いてきぼりにして、消えてしまった―
「ほら!マーくん!!もう起きないと!!」
あ、カツノリさんの声が…。
でも、まだ…眠、い……。
「………はい……後、5分…」
「もう、朝ご飯食べられないよ!」
「!!!!!(ガバァ)そ、それは困ります!」
急に飛び起きた私を見て、カツノリさんはクスクスと笑う。
だって、カツノリさんのお手製の朝ご飯が食べれないなど、太陽の昇らない朝と同じなのです。
「おはよう、マーくん」
朝日の逆光を背負いながら微笑むカツノリさんの姿は、まるで女神のよう…カツノリさんは男の人ですが。
「僕はフライパンとか洗っちゃうから、マーくんは何時ものように配膳、盛り付け当番だよ?」
「はい!わかってます!」
カツノリさんのせっかくの手作りご飯が冷めてしまわぬよう、ベッドら飛び出て、洗面台へと急ぎ、顔を洗い、軽く歯を磨き、寝間着のままキッチンへと駆け込む。
キッチンからは、炊けたお米の良い香り、お肉の焼けた匂いがまだ寝ぼけていた食欲を覚醒させるのです。
食器棚から二枚の色違いのプレート皿を取り出す。
カツノリさんは青色で私は黄色。
このプレート皿は、私がカツノリさんの家に当分お世話になると決まった時に、二人で買いにいったものなのです。
元々カツノリさんは一人暮らしをされていたので、既に一枚、同じ大きさのものを持っていられたのですが、
どうしてもペアの食器にしたいとカツノリさんがおっしゃったので、新たに二枚、買ったのです。
カツノリさんに、「マーくんの方が青なイメージだよ?」と言われましたが、
「カツノリさんは私にとって幸せの青い鳥なのでカツノリさんが青なのです。」
と、言ったら、何故でしょうか、クスクス笑われてしまいましたが、
「じゃあマーくんはヒヨコさんの黄色だね」と言われました。
何がヒヨコなのか判らなかったので伺ってみると、
「ニワトリのお母さんがいないとだめな子なの。ひとりじゃだめな子なの。」
と若干顔を赤らめつつも、冷静そうにサラッと言いながら、私を抱き締めました――
「マーくん!まだ盛り付け終わってなかったの!?またボーッとしてたでしょ。」
カツノリさんの声がして、ハッと我に返りました。
つい、懐かしい思い出にふけってしまい、手がお仕事をおさぼりしていました。
「あっ…すっすみませんカツノリさん…!今やりまっ…あっ」
カツノリさんはスッとプレート皿を私から奪うと、
あっという間に、フライパンのハムエッグをお皿に移し、ボールに作ってあったサラダを添え、両手にそれを持ち、食卓のテーブルにそそくさ行ってしまった。
「あっあっ…カツ、ノリ…さん…」
きまずい気がして、何と言えばいいか判らなくなり、私はただカツノリさんの名前を恐る恐る呼びました。
「マーくんはご飯よそって。僕は何時もよりちょっと少な目ね。」
振り返ってこちらを見たカツノリさんは、困り果てた顔の私を見て、仕方がなさそうに溜息をつきながら笑い、そう言いました。
「はっ、はい!すぐ用意します!なのでカツノリさんは座っててください!!」
カツノリさんの笑顔を見られて安心した私は、急いでご飯をよそい、食卓へと駆け込みました――
「じゃぁ僕はもう行くね?今日は面接、10時からだっけ?」
身支度を一足先に終えたカツノリさん。今日もスーツがきまってます。
「は、はい!10時からです!」
「そかそか、面接、上手くいくといいね。」
「はい!今日は寒いから気をつけてくださいね!」
「うん、ありがとう。…じゃぁ、行ってくるね…おっと、その前に…と。」
カツノリさんの、細くてしなやかな腕が、
私の胸元へとのびる。
その手は、巻かれるのを待って私の首に垂れている細長い布を掴み、
そして、その布をネクタイとしての形へと変身させます。
そう、この布は、カツノリさんがいないと、
ネクタイにはなれないのです。
「よし…と、今日もカッコいいね、僕のマーくん…ふふ。じゃぁ、お先に。面接頑張ってね。」
「はい!いってらっしゃい!カツノリさん!」
私は幸せでした。
こうして、
カツノリさんと同じ屋根の下で、
カツノリさんの美味しいご飯を、
カツノリさんと一緒に食べ、
カツノリさんと色んなことを話して、
カツノリさんと共に夜を過ごして…
とにかく、私は幸せでした。
幸せという言葉では、全然足りないくらい、幸せでした。
誰よりも愛しい愛しいカツノリさん。
あぁ…こんな毎日が、
ずーっと、
永遠に、続けばいいのに…
ですが、それは許されないこと。
カツノリさんにだけ働かせて、
私は、働きも家事さえまともにできなくて、
経済的にも、体力的にも、
カツノリさんの負担になってしまうのです。
だから、早く、新しい仕事を見つけないと…。
カツノリさんが締めてくれたネクタイをギュッと掴み、私は今日の面接場所へと向かいました――――――――
ポーン。
エレベーターが、目的の階に到着したのを告げる音を鳴らし、ドアが開きました。
エレベーターから出て、フロントで渡された鍵の番号の部屋へと向かいます。
カツノリさんは何も言わず、ただ俯いて私についてきます。
そして、鍵の番号と同じ表札の部屋に辿り着きました。
「…つきましたよ、カツノリさん。」
カツノリさんの方へ振り返り、そっとカツノリさんの肩を撫でました。
「…うん。」
カツノリさんは消えてしまいそうな小さい声で呟きました。
カチャッ
鍵を挿し、ドアを開ける。
真っ暗な部屋の奥には、大きな窓があり、
輝くライモンの街を一望できました。
「眺めがいいですね、カツノリさん。」
「…うん。」
カツノリさんはそう言いましたが、
相変わらず俯いたままで、本当にこの景色を見たのかはわかりませんでした。
「…大人に、なったねぇ…マーくんは……」
不意に、カツノリさんは、そう呟きました。
「えっ?」
「だって、今までなんて、自分からホテルにエスコートなんて出来なかったじゃない。」
「あっ、そ、そりゃぁ、もういい歳ですし、それくらいのことは…」
「そっかぁ…立派になったねぇ、マーくん。」
「…カツノリ…さん?」
「もう僕なんかいなくてもマーくんは平気なんだね。」
ガタンッ
私は、気付けば、
カツノリさんを、ベッドに、
押し倒しました。
だって、
カツノリさんが泣いていたから。
誰よりも愛しい貴方が
私の目の前で泣いている。
カツノリさんは目に涙を溜めながら、私を見つめ、何故か笑みを浮かべました。
「あはは、あのマーくんが、僕が手を引っぱってベッドに引き寄せてあげないと駄目だったあのマーくんが、まさか僕を押し倒せるようになっちゃっただなんて」
「…っカツノリさ」
「そうやって、僕のいないところで、僕以外の人も押し倒せちゃえるんだろうね。」
カツノリさんはそう言うや否や私を突き飛ばしました。
「カツノリさん!待って!行かないでください!カツノリさん!」
「僕は何処にも行ってない、マーくんが僕を置いてきぼりにして行っちゃっただけだよ。」
―さよなら、マーくん。―
静まり返った部屋には、
カツノリさんの香水の残り香だけが漂っていました。
誰よりも愛しい貴方が
私を置いてきぼりにして、消えてしまった―
PR
comment to this article